Case Study 19
ハウツー本に踊らされた個人投資家が当社への相談を
契機に「本物の不動産投資」に開眼
美容整形クリニックを経営しておられる美容整形外科医・S様(45歳男性、妻と子供2人の4人世帯、年収約4000万円)のご相談です。
少しでも節税できればと5年前にワンルームマンション(区分所有物件)投資から不動産投資を開始。予想通りの家賃収入が得られ、わずかながらも節税効果が実感できたので、その半年後にワンルームマンション物件を複数エリアで6室同時に購入、合計7室を運用してきた。ところが、2年ほど前から赤字経営の物件が出始め、1年前からは全室赤字経営に。現在は7室合わせて毎月約20万円の赤字垂れ流し状態になっている。赤字額そのものでショックを受けている訳ではないが、これでは投資の意味がない。
そこで「何とかならないか」と、当社を頼ってこられたご相談者のお一人でした。ちなみに、金融資産(全額銀行預金)が約1.5億円あるので、物件はすべて自己資金で購入したとのことでした。
[ 経 緯 ]
S様に詳しいお話を伺うと、不動産投資の経緯は次のようなものでした。
ワンルームマンションに投資したきっかけは、1冊のハウツー本との出会いだった。書籍の著者はフィナンシャルプランナー資格を持つ不動産投資の成功者。「節税の足しに不動産投資をやるか」と考えていた矢先、立ち寄った書店の投資コーナーでこのハウツー本が目に飛び込んできた。
迷わず購入し、早速読んでみると成功者の経験を綴った本だけに腑に落ちるところが多く、経営者の視点から見ても「こうすれば不動産投資に失敗しないのか」と納得した。著者は不動産会社の不動産投資セミナー講師も務めていたので、そのセミナーも聴講。リアルな話の内容に改めて引き付けられると共に、「不動産会社の折り紙付きの指南役のようなものだから」と一人合点。その著者に面会し、著者のフィナンシャルプランに基づくアドバイスを受けて不動産投資を開始した。
その著者が自分にアドバイスした骨子は
1 「ワンルーム一室投資でまず賃貸経営の実地勉強
2 一室投資の複数エリア展開でリスク分散
3 一棟物件投資で賃貸マンション経営を本格化が成功のセオリー」
というもの。その理由は「一棟物件には投資判断の目安となる相場がない。したがって物件選び、賃貸経営、投資回収のすべてにおいて経験と高度な知識が必要になる。しかし、ワンルーム物件なら駅からの距離と築年数で物件購入価格と賃料の相場が決まっているので、初心者でも投資判断がしやすい」だった。
S様はこうしたアドバイスに従い、東京23区内の人気の高いエリアから駅近の新築物件を選んだのでした。「これなら空室の心配がないし、7室も運用していればリスク分散もできる」との判断だったと言います。
[ 課 題 ]
S様の場合、節税目的の投資として新築ワンルームのマンション物件に集中したことにあります。
ワンルームを含め新築賃貸マンションの家賃は、築2~4年後に下落するのが通例です。それは、新築物件家賃が通常家賃相場より1割程度高めに設定されているためです。
新築物件は新築と言う「プレミアム価値」があるため、通常相場より1割程度高めの家賃でも入居者確保に困りません。ところが、プレミアム価値を享受できるのは最初の入居者だけで、2番目の入居者にとってはただの中古物件でしかなく、「プレミアム価値家賃」は通用しません。また賃貸マンションの入居者は2~4年のサイクルで入れ替わるのが普通です。したがって「築2~4年後に家賃が下落する」訳です。
加えて、ワンルームマンションは他の物件タイプと比べ、実質利回り(総収益率)が低いのが特徴です。
賃貸マンションの区分所有物件の場合、一般に運用経費が家賃の15~20%、固定資産税・都市計画税等の税金が家賃の5~10%かかります。つまり、投資家の手元に残る純営業収益は実家賃収入の70~80%になります。
ということは、新築で仮に1室あたり10万円の家賃収入があっても、純営業収益は7~8万円しか確保できません。年間で最大96万円といったところです。物件購入価格が2000万円だとすると、実質利回りは4.8%しかありません。家賃下落がないと仮定しても、投資回収に約21年もかかる計算です。築年数経過で家賃が下落する度に実質利回りは低下し続け、投資回収期間は長引きます。
S様のように、このような物件を7件所有していても、この状況は比例拡大するだけなので、リスク分散効果も実質的にありません。これだけでも投資とは程遠い状態と言えるでしょう。
[ 提 案 ]
当社は、こうしたS様の課題を詳細にご説明しました。するとS様は「そういうことか。これでやっと赤字経営の謎が解けた」と納得され、ハウツー本著者のアドバイスを安易に信じてしまったご自分の不明を恥じられているご様子でした。
そこで当社は、まだ不動産投資を続ける意思があるなら、現所有物件をすべて損切りで売却し、その売却益を原資に中古賃貸マンションの一棟投資に切り替えるべきだと、区分所有物件と一棟物件の収益シミュレーション結果の違いを示しながらご提案しました。
S様は当社の提案に納得され、1億5000万円程度(現所有物件売却想定額約1億1000万円+自己資金)の物件購入を当社に依頼されました。
不動産投資の再スタートに当たり、S様は「今度は節税という目的ではなく、所得の一部はきっちりと納税の形で社会に還元する不動産投資の王道を目指したい」と投資目的も明確にされたので、当社はその目的に沿い、直ちにファミリタープの築浅中古賃貸マンションの選定に入りました。これなら手頃価格で購入でき、5~10年の長期にわたって収益最大化が可能なインカムゲインを確保できる可能性が高く、状況によっては売却による十分なキャピタルゲイン確保も可能と判断したからです。
[ 現 状 ]
S様が新たに運用を開始したのは、世田谷区の東急東横線沿線に立地する、築5年の中古賃貸マンションでした。共働き向けの1LDKと家族世帯向けの2LDK・3LDKの3タイプが程よいバランスで配されているため、単身者向けのワンルーマンションと異なり長期入居比率が高い物件。純営業収益もワンルームマンションとは桁違いです。
当社の収益シミュレーションでは、インカムゲインだけでも約17年で投資回収ができるとの結果も出ています。
S様は「これが本当の不動産投資か」と驚くと同時に新たな投資意欲が湧き、今後の投資拡大の計画策定を当社に依頼されています。