2015年女性に人気のマンションエリアを検証

マンション購入予定者や賃貸マンション入居者の間で注目度の高いのが、各種の「住みたい街ランキング」と言われています。これらのランキングを頼りに分譲マンション選びをしたり、次の転居先選びをする消費者も少なくないそうです。では「女性が住みたい街」はどんなエリアで、その理由は何なのでしょうか。


女性が住みやすい街は治安の良さと買い物の便利さ

一般に「女性が住みやすい街」の条件は基本的に次の2つだと言われています。

●治安の良さ
放置自転車が多い、落書きが多い、ゴミ集積所のゴミが散乱している、コンビニの前で深夜に若者がたむろしているなどの街は「荒れた街」をイメージさせ、治安の悪さを象徴しているとも言われ、女性は嫌います。
また駅からマンションまでの間に、夜間は人通りが少なくかつ暗い場所、戸建て住宅の庭木が茂り過ぎて死角になりやすい場所、曲がりくねった路地があって死角になりやすい場所などがあると、女性は「痴漢が出没するのではないか」と不安になるようです。

●買い物の便利さ
女性は美容のため、ストレス発散のため、そもそも料理が好きなど様々な理由で外食より内食(自炊)を好むと言われています。
このため、駅前や駅からマンションまでの間に商店街や食品スーパーがある街は、女性にとっては住みやすい街と言われています。

この条件を念頭に「住みたい街」ランキングを見てみましょう。
例えば、リクルート住まいカンパニーの『2015年版 みんなが選んだ住みたい街ランキング 関東版』を見ると、総合ランキングでは吉祥寺、恵比寿、横浜の順でベスト3を占めていますが、男女別の女性ランキングでは吉祥寺、恵比寿、中目黒の順でベスト3を占めています。 人気の理由は次のようなものです。

<吉祥寺>
吉祥寺は中央線の停車駅であり、井の頭線の始発駅でもあるので、新宿へ行くにも渋谷へ行くにも便利な街と言われ、駅の周辺にパルコ、東急百貨店、ヨドバシカメラ、ヤマダ電機、マルイと5軒の大型商業施設が点在しています。加えて駅周辺にしゃれた専門店、飲食店などが集積しているのが、人気の理由と言われています。
リクルート住まいカンパニーのランキングに寄せられた女性のコメントを見ると、
●カフェや雑貨店がたくさんあり、日常的に巡ることで癒やされたい
●治安が良く魅力的。街並みがきれいで安心して子育てできる環境が整っている
――などが魅力的なようです。

<恵比寿>
恵比寿もJR山手線と東京メトロ日比谷線の停車駅があるなど交通至便で、かつ駅周辺にしゃれた専門店、飲食店が集積するなど「おしゃれでグルメな街」として知られています。ランドマークの「恵比寿ガーデンプレイス」がある街としても有名です。
これらが女性の人気が高い理由と言われ、特に新卒女性の憧れの街とも言われます。
そこで女性のフリーコメントを見ると、
●どこへ行くにも便利だし、おしゃれな街並みが良い。雑貨店やカフェもいっぱいあり、日常生活も飽きが来なさそう
●近くにいくつもの大使館があり、落ち着いたイメージがある。学校も多く、子供の教育に良さそう
――などが魅力的なようです。

<中目黒>
中目黒も東急東横線と東京メトロ日比谷線の停車駅があり、駅周辺にはしゃれた専門店、飲食店などが集積している街として有名です。駅の近くに目黒区役所総合庁舎のほか、中目黒GT、ナカメアルカスなどのランドマークもあり、目黒区の行政の中心にもなっています。その便利さから町の住民には独身女性も多く、「おしゃれで行動的な街」と言われています。
そこで女性のフリーコメントを見ると、「治安が良く、街の雰囲気も良くて都心へもすぐに出られる。目黒川などの自然もあり、おしゃれなカフェなども充実している」点が魅力的なようです。
これらフリーコメントを見ると、治安の良さや買い物の便利さが評価点になっていることが窺え、その意味でもベスト3は「女性が住みやすい街」でもありそうです。


女性向けマンションに投資するならランキングと別の視点が必要?

ただ、上述のランキングを含め各種の住みたい街ランキングを全体的に見ると、アンケート回答者の多くは交通アクセスの利便性、商業施設の集積度の高さ、話題性などで選んでいる傾向が窺えます。
このため、例えば都市再開発が進んでいる街は、外部からは一見利便性が高そうで、しゃれた店が軒を連ねて活気に溢れているように見えますが、口コミサイトなどの住民の声を見ると、「電車の混雑がひどく、遅延も頻繁にあるので交通の便が良いとは言えない」、「物価が高く生活費がけっこうかかる」、「街に来る人が多く不審者も見かける」、「地縁のない外部からの『移住民』が多いのでコミュニティ形成意識が希薄」など、住みにくさを思わせる意見が少なからず寄せられています。
また話題性が高くても、画一的なショッピングモールが建ち並び、街の個性が埋没しているところもあるようです。

そこで「女性が本当に住みやすい街」を探してみると、生活情報総合サイトの「All About」では「住まいと街の解説者」中川寛子氏が「(住みたい街ランキングに出てくる)全国区以外で『シングル女性が住みやすい街ベスト5』」を桜新町、経堂、戸越銀座、神楽坂、川口(埼玉県)の順で挙げています。各種住みたい街ランキングの上位にランクされている街とはかなり異質です。
このうちベスト3を取り上げると、中川氏はこれらの街を選んだ理由を次のように説明しています(要約)。

●桜新町
ちょっとのんびりした雰囲気が桜新町の特徴。駅前に2つの商店街があり、買い物には便利。2つとも元々は日常的な食品店や雑貨店が中心のごく普通の商店街だったが、近年は今っぽい感じの花屋、隠れ家的な居酒屋などニューフェイスも登場。少しずつ華やかな雰囲気に変わりつつある。一方で昔ながらの食堂も健在。その日の気分、懐具合で外食できるのがシングル女性にはうれしいところ。

●経堂
駅前に大丸ピーコック、小田急OXなどの食品スーパーに加え「すずらん通り」、「ハートフル農大通り」などの活気ある商店街があり、深夜営業の店も多いので、帰宅時に買物をすることが多い女性には便利。経堂は普通の商店街の中に、ひねりの利いた隠れ家的な名店が潜んでいるところが魅力。例えば、普通の店構えながら奥に入ると日本全国の名酒が揃う酒店など、「こんな店が近所にあったら嬉しい」と思えるような店がある。ライブやイベントを行っている飲食店などもあり、文化的な雰囲気もある。

●戸越銀座
活気溢れる商店街「戸越銀座」が街のランドマークになっていることで有名。都内有数の物価の安さでも有名。シングル女性の懐に優しい街。商店街は生鮮食品、加工食品、日用雑貨などだけでなく、惣菜や弁当類も安い。また、店の人たちのフレンドリーな感じもこの街の魅力。何度か買い物すれば、顔なじみになってしまう雰囲気があり、一人暮らしに寂しさを感じているシングル女性でも楽しく暮らせそう。

中川氏が選んだ街は吉祥寺、恵比寿、中目黒などと比べると家賃相場が低いのも、シングル女性には住みやすい環境かもしれません。

首都圏各地では都市再開発が盛んに行われています。再開発が進むことにより生活の利便性が飛躍的に向上する一方で、地元で古くから愛されてきた街並み、習慣・行事、街の温もり、コミュニティなどの消失を惜しむ声が少なくありません。
「住んでみたい街」と「次に引っ越す時はぜひこの街に住みたい」とではニーズが天と地ほど異なります。人気、交通アクセスの良さ、商業施設の集積度などの指標では計り切れないのが「本当に住みたい街の魅力」と言えるでしょう。まして「女性が本当に住みたい街」の指標はもっと異なるでしょう。

「住みたい街ランキング」を投資先の目安にしている投資家の方々は少なくありませんが、それだけを参考にするのは、いささか安易と言えます。
女性をターゲットにした賃貸マンションの経営を考えているなら、「女性が住みやすい街」の基本条件と言われる「治安の良さ」と「買い物の便利さ」で物件をふるいにかけ、その上で女性の入居ニーズが高い地域はどこなのか、エリアマーケティングを綿密に行って調べ、仕上げにセキュリティ関連設備、浴室換気乾燥機など女性目線に沿った住宅設備を導入する必要がありそうです。