都心エリアの不動産投資市況
都心エリアは、千代田区、港区、中央区、新宿区、渋谷区、文京区、豊島区といった、おもにJR山手線内の立法・司法・行政の各機関、大企業の本社・本店が多く集まる首都機能の中心部を指します。
各エリア単位で不動産投資市況をレポートすることも可能ですが、ここでは「都心中の都心」という切り口に視点を絞り、投資効率の高い、いわゆる「億ション」や「ヴィンテージ・マンション」などの不動産投資市況に注目してみたいと思います。
都心エリアの概況・特徴
東京都産業労働局の調べによれば、都心エリア内の事業所数は約19万4千。これは東京都に所在する事業所数の31%に相当します(区ごとに見ていくと中央区・港区・新宿区が1~3位)。
なかでも情報通信、サービス業、学術・研究、金融、医療関連の事業所が目立ちます。また、外資系企業も多く集まっています。
また、東京駅、渋谷駅、品川駅、新宿駅、池袋駅などのターミナル駅を中心に首都圏に張り巡らされた鉄道網、全国に広がる新幹線網、高速道路などの交通インフラは、日本はもとより世界でもトップクラスとされています。
それに加え、2020年開催予定の東京五輪に向け、日米航空交渉で米国向けの直行便が認められるなど羽田空港の国際化も急ピッチで進んでいます。さらに品川駅を起点に名古屋駅を経て大阪市に至る予定のリニア中央新幹線整備計画路など、都心直結の交通インフラの広域化・利便性向上は留まるところを知りません。
億ションが集中する都心エリア
都心エリアの不動産の大きな傾向として、およそ次のようなことが言えます。
千代田区・中央区・港区の都心三区は政治・経済の中枢であり、日本でも最も地価が高いエリアでもあることから、いわゆる「住宅地」は限られ、大半をオフィス街が占めています。また、番町や麹町、青山、麻布などの高級住宅地もあるにはありますが、取引される不動産数は限られています。
これに対し新宿区・渋谷区・文京区・豊島区の副都心4区はそもそも都心の一極集中を分散させるために指定された副都心で、都心3区に比べると比較的住宅地も多く、そのほかのエリアに比べれば地価は高いものの、比較的不動産取引数が多い地域となっています。
都心エリアでは、限られた数の不動産を取引するわけですから、都心の地価には居住地としての実質的価値に加えてステイタス的な付加価値があり、これが不動産投資上の大きな魅力となっています。
都心に不動産を所有することには大きなステイタス的価値があります。また不動産物件も地価に見合ったハイグレードの建物・設備が用意されることになります。このため、ほかの地域ではよく目安とされる賃料相場の見極めも難しくなります。
東京カンテイのプレスリリースによれば、2008~2015年に新規分譲された、平均価格が1億円を超える新築マンション(いわゆる億ション)の第1位は4億9,812万円の「ラヴィアンパレス松濤」(渋谷区)で、上位10位まではいずれも東京都の渋谷区・港区・千代田区に立地しています。
都心エリア以外の億ションとしては18位に「BELISTA御殿山」(品川区)、22位に「FUKASAWA SPACE9」(世田谷区)がようやくランクインしており、いかに億ションの都心占有率が高いかがお分かりいただけると思います。また行政区ごとにみると、港区に上記の億ションの40.17%が集中し、大半は青山・赤坂・麻布エリアで供給されています。
居住性の「質」と不動産資産価値を大きく変える都心再開発計画
都心エリアでは多くの再開発計画が推進されていますが、それらの計画のうち、特に住宅供給数の多さに着目した再開発計画をご紹介します。
【中央区】
・湊二丁目東地区 …… 約0.5haの敷地に約440戸の住宅が建設される計画。竣工予定は平成29年。
・勝どき東地区 ……… 土地利用転換により、住宅建設計画戸数3100戸以上という住宅地を形成する。竣工予定は平成39年。
【港区】
・浜松町一丁目 …… 浜松町二丁目全域は商業施設・公共施設を中心とした大規模再開発がスタートしているが、それに対し一丁目では汐留地区にかけて約560戸の住宅や再開発ビル、オフィス棟が立てられる計画。竣工予定は平成30年度。
・白金一丁目東部北地区 …… 高さ約156mの超高層マンション1棟を含む住商工医一体の市街地再開発事業。2020年に竣工予定。
【新宿区】
・西新宿五丁目 …… 防災性の向上と良好な居住環境の形成を目的に住宅戸数953戸を含む再開発事業。竣工予定は平成29年度。
【文京区】
・春日・後楽園駅前地区 …… 文京区役所「文京シビックホール」の北側で、北・西・南の3つの街区として再開発が進められる事業。南街区に157戸、北街区に住戸数578戸の住宅を供給予定。竣工予定は2021年度末。
【渋谷区】
・渋谷駅桜丘口地区 …… 駅舎の建て替えなど複数の大規模再開発が計画されている渋谷駅周辺の桜丘口側では、アーバン・コアを整備し歩行者デッキをかけるなど、多層の歩行者ネットワークを構築する再開発を進めています。また、約170戸の住宅を含む業務施設・商業施設の建築を予定しており、平成32年12月の竣工を予定しています。
また、都心エリアの再開発は業務施設・商業施設・公共施設・住宅を含む街レベルでの大規模開発が昨今の主流となっており、再開発エリアの周辺の地価にも広域にわたって大きな影響を及ぼすことが予想されます。不動産投資を検討するにあたり再開発計画を調べる際には、当該エリアの住宅戸数の直接増加数に加え、周辺の人の流れなどを詳細に予測する必要があるでしょう。
さらに再開発によって周辺の景観や交通の利便性などが大きく変わることから、従来不動産投資の対象として注目されていなかったエリアが一躍脚光を浴びる可能性も十分考えられます。
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